子どもに優しい国

昨日、バスの運転手が双子をベビーカーに乗せた女性の乗車を拒否したニュースを目にした。

日本はまだまだ子育てがしづらい国だと思いながら、子ども連れで過ごしたドイツ滞在を思い出した。

上の子がおよそ1歳半の頃、家族で1か月間ドイツで夏を過ごしたことがある。妊娠・出産・乳飲み子の育児とで、海外旅行を我慢してきていたので、フランクフルト空港に降り立ち、ドイツの乾燥した空気と耳に飛び込んでくるドイツ語に触れると、ああ、ようやくドイツに来ることができたと涙が出てきた。

このドイツ滞在は、子連れでドイツを体験したい!という、はっきり言って、私のエゴであった。子どもにとっては、苦痛な長距離移動と記憶にも残らない外国での滞在で、迷惑なだけなんだけれども、夏のヨーロッパを家族で過ごしたかった。

車社会の沖縄なので、それまでベビーカーで公共交通機関を利用したことがなかった。着いた次の日に、コンパクトなベビーカーを購入した。そのベビーカーに子どもを乗せて、バスや電車に乗っていろいろな所へ出かけた。ドイツでは、バスや電車に乗る際、子どもをベビーカーから降ろし、ベビーカーをたたむ必要はない。どんなに混んでいても、ベビーカーや車いすの乗客が乗ってくると、スペースを空けてくれるし、親切にしてくれる。乗り降りの際も、周りの人がさっと手を貸して乗り降りを手伝ってくれる。

ベビーカーではなく、子どもが5,6人乗ったカートも何度か目にしたこともある。その時も、周りの人がにこにこしながら、カートの乗り降りをサポートし、バスの中の乗客も当然のようにカートのスペースを空けていた。

バスの大きさや座席の配置も日本とはだいぶ違っていて、車いすの人やベビーカーの人が載ることができる十分なスペースがあり、乗降の際は、車体が傾いて乗り降りしやすいようになっている。いろいろな人が利用しやすいように最初から工夫されているのが、ドイツの公共交通機関なのだ。自転車を乗せて、バスも電車も乗ることができ、電車には自転車専用車両もある。

レストランへ行けば、たいていのレストランが、子どもが退屈しないように、おもちゃや塗り絵、カード、お菓子等を準備していたし、マルクトやインビス(持ち帰り中心の軽食屋さん)では、子どもにおまけやお菓子をくれたり、優しくしてくれた。もちろんこちらも、子どもがぐずらないように、絵本やお菓子などを用意して出かけるのだが、先方がこのように準備してくれていると、「子ども連れで申し訳ないな。」という気持ちが和らいで、「子連れでもウェルカムなんだ!」と、よりその場を楽しむことができた。

その数年後の上の子が4歳の頃、ドイツ中心に旅行をした際のことも思い出した。子どもがきれいなポストカードに興味を持ち、どうしても欲しいというので、なら自分で買ってきなさいと、子どもにお金を渡してレジに買いに行かせた。その際も、お金を受け取らなかったり(つまり無料になったり)、ポストカードよりもはるかに高いであろう商品として並んでいる小さな素敵な絵本をおまけでくださったりということがあった。

日本で子ども連れの親が肩身の狭い思いをしている話を見たり聞いたりする度に、心が痛み、もう少し寛容な社会になってほしい、と願う。「寛容さ」には、ある程度の「余裕」が必要だと思うのだけれど、日本社会にはその「余裕」がもてないのかもしれない。その「余裕のなさ」には、きっと働き方も大きく関係している。

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